· 

袖振り合うも多生の縁

前回のブログから早1か月が経ってしまいました…。

 

なんだか毎日バタバタしていたんです。日々思うことや書きたいことはあるのですが、沈思する時間がないというか、パソコンの前にゆっくり座って言葉を選びながらタイプする…が、なかなかできない。

 

それは、店の営業&子育て&家事に続き、走る&ドイツ語勉強&最低6時間以上の睡眠という優先順位で24時間を使っているからですね。「夜ゆっくり酒を飲む」はかなり順位を落としております…。

 

昨年と打って変わって、今年の4~6月はお店が忙しかったんです。ありがたいことです。

ちょうど昨年の5月初めに新型コロナが感染症法の5類に分類されたことで、コロナ解禁!という空気とともに家飲み需要が減り、ハムソー屋の閑散期がまさに閑散としていたのが去年。

今年は企業様の大口のご注文があったり、常連&新規の個人のお客さま方のご利用も増えて、ちょっと嬉しい戸惑いです😊 

 

本来なら製造もこの時期に一息つけるのですが、今年は商品を切らさないようにと店主が休日返上で工房にこもる日々が続いています。

「俺は好きなことしてるから全然大丈夫だよ」って口では言っているけど、疲れ知らずの若者ではもうないから、体力的にきついだろうな…。

 

そんなことで店主が朝から仕事に出かけた定休日の月曜、私も店で雑事が待っていたのですが、急に現実逃避したくなってしまいました…。定休日だもの、休みたい…。

 

映画を観に行こう!と思い立って近所のミニシアターの上映スケジュールを検索。13時くらいに終わる良さそうな映画があったので早速席を抑えてチケット購入完了。片手でなんでもできちゃうこの便利さよ、です。

 

店主には悪くて言えないな…という後ろめたい気持ちとは裏腹に、突然のエンターテインメントに映画館に向かう足取りはウキウキ… そして観た映画が『パスト ライブス/再会』でした。

 

 

皆さん、もうご覧になりましたか?なんの前情報も持たずに観に行ったのですが、とっても良かったんです。じわじわ心を揺さぶられるような繊細な感情の描写と共感しかない結末。

2023年度のアカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされた他、世界の映画祭や賞レースを席捲中というのもうなづけます。

 

物語は、12歳の時に出会った二人の男女の別れと再会、長い時を経た末に二人が選ぶ運命とは…!というものですが(ネタばれになるのでこれ以上は語りませんね。ぜひご覧になってください!)、映画のキーワードになる言葉があります(映画公式HPから抜粋):

 

“縁 ーイニョンー”

「運命」の意味で使われる韓国語。見知らぬ人とすれ違ったときに、袖が偶然触れるのは、前世 ーPast Lives ー でふたりの間に “縁” があったから。

 

まさに「袖振り合うも多生の縁」。韓国でも同じような概念があることを初めて知ったのですが、これは仏教思想から来ている輪廻転生に基づく考え方のようです。「多生」は何回も生まれ変わること、を意味するそうです。「他生」と表記するバージョンもあるようですが、これは仏語で今生(こんじょう/現世)からみて、前世と来世を指すそうです。

 

映画を見ながら、この言葉に出会ったのは20歳の頃だったと思い出しました。

まだ大学生ながら、宮城県農水課が募集していたブランド米を全国にPRするキャンペーンガール(キャンギャルです😚)のお仕事を1年間させていただいたことがありました。そこで初めて一人の社会人として大人の方々と接する機会を持ち、社会人としてのマナーや立ち居振る舞い、仕事をする人間の節度や責任感を初めて意識したことを覚えています。

 

活動を通して北は北海道、南は沖縄まで全国を訪れていろいろな方々と出会う機会に恵まれ、最初は浮足立っていた私も、1年の活動が終わるころにしっかりと背筋を伸ばして初めてお会いする方々ともにこやかに接することができていたように思います。

 

活動終了時に開いていただいたお別れ会の中で、ある方が何気なく語った言葉が「袖振り合うも多生の縁」でした。毎日自宅と大学の往復だけしていては決して得られなかったたくさんの出会い。ただの偶然と通り過ぎる景色のように意識から捨て去ってしまうにはもったいないほどあまりにも多くの示唆と影響を私にもたらしてくれました。

 

私は信心深い仏教徒ではありませんが、今を生きる自分にとっては、こうした日々の出会いが特別なものだという意識が、毎日を輝かせてくれると感じられます。

 

30年前(そんなに時が経ったのか…!)のように全国各地に出かけていくことはありませんが、今はアインベルクのカウンター越しの出会いを楽しみにしている毎日です。

 

「袖振り合うも多生の縁」

 

生まれ変わりや運命を信じますか?と問われると、正直分からない…というのが感想ですが、店主との出会いはさらに遡ること34年前!!なんとなく、これは運命的な感じがしますね… ハハハ😅