もう年始早々、価格改定の話なんてテンション下がりますよね……すみません😓
つまり商品の値上げを検討しているという話です。
あえてブログに書くこともないのでしょうが、価格云々よりも、世の中が大変な時代になってきたなーという思いの方が強く、現在地点の記録として残しておこうかなと思い、頭に浮かんでいることを徒然に記そうと思います。
「失われた30年」とは耳たこですが、日本経済が低迷を続ける間にデフレが進み、日本は世界的に見てモノの値段が安い国になってしまいました。
就職氷河期第二期生くらいの私や店主世代の社会人人生は、まさにこの30年とほぼ一致しています。
勤続年数が増えれば少しずつでもお給料は上がっていたように思いますし、スキルアップをして転職したりして、以前より年収が上がったー!なんて喜んだこともありました。
それでも、実はデフレの最中にいる、ということにほとんど自覚がありませんでした。
物価の変動に敏感にならなければいけないほど緊張した空気の中で生きていなかった。まだぼんやり過ごす余裕があったのだと思います。
今から振り返るとこの頃から投資を始めていれば良かった…と後悔。こんな世の中になるなんて、ね…。
生活に余裕があった分はほぼすべて貯金して開業資金を貯めました。
脱サラして店主の故郷・仙台に戻り、商売を始めた2017年。
ソーセージ作りは職人芸ですが、経営は素人の私たち。とにかくお客様にご迷惑をおかけしたり、法律を破ったりすることだけはしないようにと、手探りで一年一年進んできました。
アインベルク3年目の2020年の初春、世界中で「COVID-19」と命名された病気が広がりました。新型コロナウイルス感染症の登場はパニックでしたね…。
感染症のせいで急に社会や経済の動きが止まってしまいました。グローバル経済の恩恵と思っていたことが一転、不都合に変わりました。
ドイツから輸入した機械類を使い、原材料も資材もドイツから、ドイツの美味しいマスタードやザワークラウトにドイツビール…と仙台でドイツの美味しい食文化を提供することを生業にしているアインベルク。
コロナ禍はドイツや日本のみならず、世界中の製造業や物流の停滞をもたらしました。資源価格が高騰し、モノやサービスの値段が急に上がり始めました。インフレの開始です。皮肉にも「日銀の物価上昇目標2%」がこの後達成されます。
そんなことで、開店以来初めて一部の商品の値上げに踏み切ったのが 2021年11月でした。
フライッシュケーゼブロック1本税込1,080円を1,150円に改訂。人気商品ということもあり、お客様から随分戸惑いのお声を聞きました。
それと同じくらい「仕方ないわよね…」と同情していただいたり、「がんばって美味しいものを作り続けてくださいね」と励ましのお声もかけていただきました。ありがたいです。
燃料価格、電気代、食品などなど… その後も物価高騰が続いているのは皆さんもご承知のことと思います。
コロナ禍まっただ中で2022年2月に始まったウクライナ戦争は、終わりが見えず、3年目に突入することが確実視されています。
穀倉地帯のウクライナ、エネルギー・農業資源ともに豊かなロシア。
ヨーロッパ産の様々な物品にこの戦争が与えた影響は大きく、アインベルクからはヘンデルマイヤーのマスタードが消え、ドイツ産のスパイスや製造資材の価格高騰につながっています。
コンテナ運賃の上昇や燃油高などでコロナ禍にダメージを受けていた世界物流は、戦争勃発以後ロシア上空の航空輸送ができなくなり、海上輸送のコストがさらに上がる事態に発展しました。
そして、2023年10月から今も続くイスラエルとパレスチナ(ハマス)の武力衝突。戦争に発展したこの争いから、パレスチナを支持するイエメンの武装組織フーシ派が、紅海を航行するイスラエル関連の船舶を攻撃し始めました。日本郵船が運行する輸送船がシージャックされたニュースはまだ記憶に新しいものです。
紅海経由の海上輸送路がもはや安全ではなくなったことで、ヨーロッパからアジアに向けての海上輸送は、従来の「スエズ運河→紅海→インド洋」ではなく、地中海からジブラルタル海峡を抜け、アフリカ大陸西側の大西洋を南下し、喜望峰を回ってインド洋に出る、という大航海時代のような超遠回りルートを取らざるを得ない状況になってしまいました。
ということは、今後またもや物流コストが上がり、物価高騰に拍車をかけることになるわけです。
世界各地で紛争が起こるほどに、私たちの生活やビジネスにも不可避な影響が起こります。
罪もない市井の人々がこうした争いによって命を落とし、生活すべてを失っていく現状を直視することがとてもつらく、一刻も早くこれらの争いが地上からなくなることを願うことしかできない日々に、正直疲れを感じたりもします。
そこに、相次ぐ国内政治のスキャンダル、元旦に発生した能登半島地震。
明るいニュースが少ない中で、無事な私たちが一日一日を元気に全力で頑張ろうと、その思いはより強くなりました。
話を戻すと、ここ数年のインフレ傾向の中で、アインベルクとしてはできるだけ値上げをせず自助努力でしのごうとしてきました。
この点において、店主は日々歩留まりの改善に力を入れてきました。豚一頭を仕入れて、それぞれの部位を無駄にすることなくどのように使うか、詳細には説明できませんが、店主が試行錯誤しては高みを目指す姿をこの数年見てきました。
定番のフライッシュケーゼ、ぱっと見は開店当初からなんら変わりませんが、確実に品質が上がっています。
スーパーで買うお菓子は、価格は変わらないと思っても、サイズが小さくなっていたりして…。
フライッシュケーゼのサイズを小さくする… なんてことは決してせずに、毎日この人気商品を作っています。
「これがこの値段なんて安すぎるわ!」なんてお客様に言われると、本当に嬉しくなります。
いろいろなモノやサービスの価格が上がり続けている中で、いつかは私たちの商品も値上げをしなければいけないだろう、と思っています。この商売を細々とでも長く続けていくには不可避だと思っています。
つい先日、あるお客様から温かいメッセージをいただきました。
その方のお父様は昨年11月に急逝なさったとのことで、夫を亡くしたお母様が悲しみに暮れる日々を送っていたところ、偶然テレビで紹介されたアインベルクを知り、気晴らしに母娘で買い物に来られたそうです。
ご購入いただいたフライッシュケーゼやビーフジャーキーなどをお母様が大変気に入ってくださって、美味しい食事は心を癒やす力があると、お母様のお姿を見て実感しました… という内容のメールでした。
嬉しくて店主にメールを見せたところ、「いつまでも、寄り添い続けますよ…」とぽつり。
私たちが作っているのは売上が上がる商品ではなく、皆さまが喜んでくださる商品です。
安くて美味しいから喜んでくださる、というのも大事ですが、美味しさが心にしみて幸せな気持ちがこみ上げてくる…、そんな商品をご提供したいのです。
きれい事だけではもちろん商売はできません。
ソーセージ御殿を建てる夢なんてはなから持っていませんが、私たちの生活と事業を健全に続けていけるだけの価格設定は必要だと思っています。
悩ましいですねー。毎晩店主とこの議題で酒を飲んで、眠くなっちゃいます…。
この文章同様、価格改定の話はまとまりがつかず、もう少し結論が出るまで時間がかかりそうです。
アインベルクをご愛顧いただく皆さまへの影響を最小限にできるよう、知恵を絞りたいと思います。
どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。